数年ぶりにメルマガを再開しようと思い立って、以前買った配信ツールの設置マニュアルを開きました。そして、そのまま閉じました。サーバーへの設置からやり直すのが、どうにも面倒だったからです。
こんにちは。AIでDXを加速する専門家、ばんのです。
結局その日、私が選んだのは「配信ツールの設定をする」ではなく「配信ツールを自分で作る」でした。流行りのバイブコーディングでどこまでのものができるのか、正直かなりワクワクしていました。そうしてできあがったのが、約8週間・コードにして約17,000行のプラグインです。117回の更新を重ねて、今も毎日動き続けています。
プログラマーを雇ったわけではありません。私がAIに指示を出しながら、少しずつ育てたものです。
今回から数回に分けて、この記録をお届けします。第1回は「なぜ既製品を使わずに自作したのか」という判断の話です。先に断っておくと、費用を浮かせるためではありません。
この記事を読むとわかること
- 既製の配信ツールがあるのに自作を選んだ、3つの理由
- 「ツールの設定が面倒」の正体
- 実際に自作したものの規模と、かかった時間
- 自作をおすすめできる人と、やめておいたほうがいい人の線引き
先に書いておきます。コストが理由ではありません
この手の記事は「月額◯円を浮かせました」という話になりがちですが、私の場合は違います。
これまでにアスメル、エキスパといった配信サービスを使ってきましたし、メルマガと会員サイトを一体で扱えるサーバーインストール型のツールCyfons(サイフォンス)も購入済みでした。購入時で3万円ほどだったと記憶しています。買い切りなので、手元にあるものを使う限り追加の出費はゼロです。
月額型のサービスについても、正直なところ月3,000円くらいなら妥当だと思っています。読者管理、配信の安定性、迷惑メール対策まで面倒を見てもらえることを考えれば、むしろ安いくらいです。
つまり、既製品に不満があって飛び出したわけでも、コストに耐えかねたわけでもありません。それでも自作を選びました。理由は3つあります。
理由1:新しいドメインでの再開には、設置のやり直しが必要だった
今回のメルマガは、新しく立ち上げたブログのためのものです。つまり、ドメインが以前とは違います。
ここで問題になったのが、Cyfonsが「サーバーインストール型」だという点でした。月額サービスのようにIDとパスワードでログインすれば使えるものではなく、自分のレンタルサーバーにプログラム一式をアップロードして設置し、そのドメインで動かす仕組みです。
以前のドメインに設置したものを、そのまま新しいブログのメルマガに使うこともできなくはありません。ですが、それをやるとブログのドメインとメールの送信元ドメインが食い違います。
読者からすれば、Aというサイトに登録したのに、Bという見覚えのないドメインからメールが届くことになります。迷惑メールに振り分けられやすくなりますし、そもそも読者に不審に思われては元も子もありません。
結局、新しいドメインで一から設置し直すことになります。
数年前に一度やった作業ですが、当然すべて忘れています。しかもその間にサーバーの管理画面もPHPのバージョンも変わっています。マニュアルを開き直して、手順をたどり直すところからのスタートです。
そして、設置が終わってようやくスタートラインです。そこからステップメールを一本立ち上げるのに、まだこれだけの作業が残っています。
- 登録フォームを作って、サイトに設置する
- 登録確認メールの文面を書いて、承認後に飛ばすページを用意する
- ステップメールを何通も書いて、それぞれ何日後に送るか設定する
- 配信停止の受付ページを用意する
- 差出人アドレスや送信サーバーの設定を通す
- テスト登録して、最初から最後まで一通り動かして確認する
問題は、設置作業も含めて、このほとんどが「ツールの作法を思い出す作業」だということです。ファイルの置き場所、画面の位置、項目の名前、独特の言い回し。数年前に一度覚えたものを、もう一度たどり直す。この時間は、メルマガの中身を良くすることには1ミリも貢献しません。
実は2021年にも、当時使っていたプラグインの導入手順をMailPoet導入奮闘記として8回の連載にまとめています。あれだけ書いておいて、数年経つと結局また同じところでつまずくわけです。
そしてこの「覚え直しコスト」は、買い切りのツールを持っていても消えません。ブランクが空くたび、ツールを乗り換えるたびに、何度でも払わされます。
理由2:バイブコーディングができれば、今後は何でも作れる
これが決め手でした。
ちょうどClaude Codeを使い始めた時期で、日本語で指示を出すだけでコードが書けるという手応えを得ていました。いわゆるバイブコーディングです。始め方そのものはバイブコーディングの始め方に書いたとおりで、プログラミングの文法を覚える必要はありません。
ここで考えたのは、目の前のメルマガのことではありませんでした。
この技術がちゃんと使えるようになれば、今後「こういう仕組みがあれば楽になるのに」と思ったとき、そのつど自分で作れるようになります。顧客管理でも、見積書の自動作成でも、サイトの分析ツールでも同じです。一人社長にとって、これは働き方が変わる話です。
とはいえ、練習のためだけに何かを作っても続きません。どうせなら、完成したら実際に使うものがいい。
そこに「ステップメールを組み直さなければいけない」という現実の課題があったわけです。手始めの題材として、これ以上ないものでした。
理由3:どうせ組み直すなら、自分の運用に合わせたい
既製品を使うということは、用意された機能の範囲に自分の運用を合わせるということです。
たとえば私の場合、「登録から3日たっても確認メールのリンクを踏んでいない人にだけ、もう一度だけ確認メールを送りたい。5日目にもう一度送って、7日目で締め切る。それ以上はしつこいのでやらない」という要望がありました。
この程度のことでも、設定画面に項目がなければ実現できません。要望を送っても、いつ実装されるかはわかりません。サービス側からすれば、利用者一人の都合で機能を追加する理由がないからです。
こういう小さな妥協は、単体では大したことがありません。ですが数年運用すると積み上がって、だんだん自分のメルマガではなくなっていきます。
実際に何を作ったのか
作ったのは、WordPressに組み込むステップメール配信プラグインです。運営サイトの名前を取って「BKSM」と呼んでいます。
最初のバージョンを動かしたのが6月21日。この記事を書いている時点で8月14日ですから、約8週間です。その間の数字を並べるとこうなります。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 開発期間 | 約8週間 |
| 更新回数 | 117回 |
| バージョン | v1.2.0 → v3.21.0 |
| コードの量 | 約17,000行(PHP・テスト除く) |
| 動作確認用のテスト | 約2,300行 |
| 専用のデータ保管場所 | 12種類 |
17,000行と言われてもピンとこないと思いますが、市販のWordPressプラグインとして十分に成立する規模です。もちろん、この行数を私が打ち込んだわけではありません。私がやったのは、何を作るかを決めて、AIに指示を出し、上がってきたものを確認して、違えば差し戻す。この繰り返しです。
主な機能を挙げると、こんなところです。
- 登録した人へ、シナリオに沿って自動でメールを配信する
- 一斉配信と、その予約送信
- 件名を2パターン試して、成績のいいほうを残りの人に送るABテスト
- 開封とクリックの記録、曜日と時間帯ごとの傾向表示
- 読者からの返信をメールソフトを開かずに管理画面で受けて、そのまま返信する
- 記事の中に登録バナーを自動で差し込み、どの位置が一番押されたかを計測する
- 特典PDFの配布とダウンロードページの自動生成
最初からこの全部を設計したわけではありません。運用しながら「これが足りない」と気づくたびに、1つずつ足していった結果です。117回の更新という数字は、そのまま「足りないと気づいた回数」だと思ってください。
作ってみて、想定外だった3つのこと
1. 「思いついた日に足せる」の破壊力
理由3で挙げた「3日目と5日目に確認メールを再送したい」という要望は、この記事を書く前日に作りました。思いついてから本番で動くまで、1日です。
既製品なら、要望フォームに送って、いつ実装されるかわからないまま待つ機能です。外注なら、見積もりを取って発注する時点で「まあいいか」となっていたはずです。
この差は、1回では大したことがありません。ですが117回積み上がると、まったく別のものになります。
2. 数字が全部つながる
サイトとメールが同じ場所にあるので、「どの記事のどの位置のバナーから登録した人が、その後どのメールを開いたか」まで一本の線で追えます。
外部サービスを使っていたころは、この分析をあきらめていました。つなぐ手間が、得られる情報に見合わなかったからです。
3. 中身がわかると、トラブルの待ち時間がゼロになる
これは予想外の効果でした。
自分で作った仕組みなので、「なぜこのメールが届かなかったのか」を自分で追えます。実際、送信エラーが出たときに調べてみたら、設定していた差出人アドレスが1文字間違っていた、ということがありました。
既製品だと、画面に「送信に失敗しました」としか出ないことがあります。そこから先はサポートに問い合わせて、返事を待つしかありません。原因が見えていれば、待ち時間そのものがなくなります。
正直に書きます。自作をおすすめしない人
ここまで良い面を書いてきましたが、誰にでもすすめられるものではありません。次に当てはまる方は、既製品を使ったほうが幸せです。
- メルマガをまだ一度も出したことがない方。まず既製品の無料枠で始めて、続けられるかどうかを確かめるほうが先です。作ってから続かないのが一番もったいない。
- 不具合が出たときに、自分で調べる気になれない方。自作したものに問い合わせ先はありません。困ったときに向き合う相手は、AIと自分だけです。
- 読者が数万人規模の方。この規模になると送信の安定性やサーバーの負荷が別次元の問題になるので、専門の事業者に任せるべきです。
逆に、「ツールの設定に時間を溶かしている実感がある」「今後もこういう仕組みを自分で作れるようになりたい」という方には、はっきりおすすめできます。
よくある質問
Q1. プログラミングの知識がなくても本当に作れますか
コードを書く知識は不要です。ただし、「何がしたいのか」を順序立てて説明する力は必要になります。「いい感じのメルマガ機能を作って」では動くものは出てきません。「登録から3日たっても確認していない人に、1回だけ再送したい」まで具体化できれば、AIは形にしてくれます。
Q2. 結局、既製品より安く済むのですか
単純比較なら微妙なところです。買い切り型のツールは3万円ほど、月額サービスも3,000円前後で、一方でAIの利用料は月額で発生し続けます。金額だけを見て自作に踏み切ると、たぶん割に合いません。
元が取れるのは、作れるようになったこと自体を次に使い回したときです。2つ目、3つ目のツールを作る段になると、費用の計算は変わってきます。
Q3. AIが書いたコードをどうやって信用するのですか
信用しません。というより、信用せずに済む手順を毎回踏んでいます。メールを送る仕組みは、間違えると読者に同じメールを何通も送りつける事故になるので、ここが一番大事なところです。この検証のやり方だけで記事1本になるので、次回に譲ります。
Q4. 作ったあと、放っておいても動きますか
動きます。ただしWordPress本体やPHPの更新に追随する必要はあるので、完全に手放しとまではいきません。この手間を許容できるかどうかも、判断材料の1つです。
ばんのの視点:最初に作るものは「今すぐ使うもの」から選ぶ
バイブコーディングを覚えようとするとき、多くの方は練習用の題材を探します。ToDoアプリを作ってみる、簡単な家計簿を作ってみる。教材としては正しいのですが、たいてい途中で飽きます。完成しても使わないからです。
私がメルマガの仕組みを最後まで作り切れたのは、才能でも根性でもなく、作らないと自分が困る状態だったからです。動かなければ読者にメールが届かない。だから直す。この繰り返しが、結果として117回の更新になりました。
今あなたが「設定するのが面倒だな」と思って後回しにしている作業があるなら、それが最初の題材の候補です。面倒だと感じているということは、それだけ具体的に不便がわかっているということですから、AIへの指示もはっきり出せます。
次回予告
第2回では、「AIが書いたコードをどうやって確かめるのか」をお話しします。
AIは驚くほど速くコードを書きますが、そのまま使うのは危険です。実際、私が作ったものにも、放置していれば「送信元のサーバーが一時的に不調になっただけで、読者全員が配信停止扱いになる」という事故につながる作りが混ざっていました。動かしてみるだけでは絶対に見つからない類のものです。
これをどうやって見つけて、どう直したのか。プログラミング未経験の方でも実践できる手順として整理してお届けします。
【公開しました】第2回:AIが書いたコードをどうやって確かめるのか